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日別アーカイブ: 2026年5月14日

増える認知症高齢者の保有資産

皆様こんにちは。

奈良市富雄の行政書士 松岡です。

日本では高齢化とともに、

認知症高齢者が保有する金融資産の増加が

大きな社会課題になっています。

軽度認知障害(MCI)を含めた高齢者の保有資産は、

2030年には500兆円を超えるとの試算もあります。

一方で、認知症への備えとして活用される「成年後見制度」や

「家族信託」は、まだ十分に普及していません。

しかし、認知症が進行すると、

銀行口座や不動産などの資産が「凍結」され、

本人や家族が自由に使えなくなるケースが現実に

増えています。

銀行では、本人に判断能力がないと判断されると、

不正利用防止のため口座が凍結されることがあります。

そうなると、

・入院費や介護費を引き出せない

・施設入所費用を支払えない

・不動産売却ができない

・家族でも預金を動かせない

といった問題が発生します。

解除には家庭裁判所で

成年後見人を選任してもらう必要がありますが、

申立てから数カ月かかることも珍しくありません。

政府の高齢社会白書では、2030年の認知症患者数は

約523万人に達する見通しです。

しかし、成年後見制度の利用者数は約26万人にとどまり、

利用率は認知症患者全体の約5%程度です。

背景には、現行制度の使いづらさがあります。

現行制度の問題点としては、

・一度始めると原則やめられない

・家庭裁判所への報告負担が大きい

・親族が後見人になれるとは限らない

・弁護士や司法書士への報酬が継続的に必要

・本人の財産活用が制限されやすい

特に近年は、後見人に専門職が選ばれる割合が

8割を超えており、

「家族が自由に使えなくなる」というイメージが

広がっています。

そのため、

「認知症対策は必要だと思うが、後見制度は使いたくない」

という声も少なくありません。

そこで近年注目されているのが、

・任意後見制度

・家族信託

です。

任意後見制度は、本人が元気なうちに、

「将来、判断能力が低下したら誰に支援してもらうか」

を自分で決めて契約しておく制度です。

家族や信頼できる人を指定できるため、

本人の意思を反映しやすい特徴があります。

また、家族信託は、財産管理を家族に託す仕組みで、

柔軟な資産管理が可能です。

例えば、

・認知症後も生活費を管理できる

・不動産売却がしやすい

・相続対策と組み合わせやすい

などのメリットがあります。

近年は、「成年後見だけでは不十分」として、

家族信託を併用するケースも増えています。

こうした課題を受け、

政府は成年後見制度の見直しを進めています。

2026年には民法改正案が閣議決定され、

今後の制度変更が注目されています。

これまで原則終身利用だった制度を、

・遺産分割

・不動産売却

・特定契約

など、必要な場面に限定して利用できる方向へ見直します。

そして、必要性がなくなれば制度利用を

終了できる仕組みが検討されています。

また、一定条件下では、家庭裁判所の判断により

「監督人なし」で利用できる可能性も議論されています。

成年後見制度は、

「財産を縛る制度」から、

「必要時に柔軟に支援する制度」

へ転換しようとしていると言えます。

認知症対策で最も重要なのは、「判断能力があるうち」に

準備することです。

認知症が進行してからでは、家族信託契約、任意後見契約、

遺言書作成などができなくなる可能性があります。

今後は、

「まだ元気だから大丈夫」

ではなく、

「元気なうちに備える」

という考え方がますます重要になると思われます。

認知症高齢者の資産増加は、

個人の問題ではなく社会全体の課題になっています。

重要なのは、

・本人の意思を尊重すること

・家族が早めに話し合うこと

・状況に合った制度を選ぶこと

です。

認知症による「資産凍結」を防ぐためにも、

元気なうちからの備えが今

後ますます重要になっていきそうです。