ブログ|株式会社ワイズ保険事務所&行政書士ワイズ法務事務所

オフィシャルブログ

地域課題をビジネスに変える

皆様こんにちは。

奈良市富雄の行政書士 松岡です。

地方では、人口減少や高齢化、人手不足、空き店舗の増加など、

さまざまな地域課題が生まれています。

一方で、こうした「地域の困りごと」をビジネスの機会として捉え、

新しい事業を始める動きも広がっています。

最近では、自治体や金融機関などが地域の事業者を支えながら、

地域資源を活用した新しいビジネスを

育てていく取り組みが注目されています。

その代表的な制度の一つが、

総務省の「ローカル10,000プロジェクト」です。

【地域資源や地域課題を新しい事業につなげる】

ローカル10,000プロジェクトは、

地域資源の活用や地域課題の解決につながる新たな事業の立ち上げを

自治体や金融機関などと連携して支援する取り組みです。

対象となるのは、地域の特産品を活用した事業だけではありません。

例えば、空き店舗を活用した新しいサービス、

地域住民の買い物や移動を支える事業、

高齢者や子育て世代を支援するサービスなど、

地域が抱える課題をビジネスによって解決する取り組みも考えられます。

こうした事業では、「地域にあるもの」を活用することと、

「地域で困っていること」を解決することが、

事業の価値につながっていきます。

【最大5,500万円の支援。特徴は「地域との連携」】

ローカル10,000プロジェクトの特徴は、

単に事業者へ補助金を交付するという仕組みではないことです。

施設整備や機械装置など、新しい事業を始めるための初期投資を支援し、

基本的な助成上限額は3,000万円。

さらに、地域金融機関からの融資など一定の条件を満たす場合には、

最大5,500万円まで支援額が拡大します。

そのため、自治体、事業者、金融機関などが一緒になって、

地域の中で事業を育てていくことが重要になります。

制度の利用には、

・地域資源を活用すること

・地域課題の解決や雇用創出につながること

・地域金融機関から融資・出資などを受けること

・新しい取り組みであること

・他地域への波及が期待できること

といった要件があります。

また、申請主体は事業者自身ではなく自治体となるため、

アイデアの段階から自治体や金融機関などに相談しながら

進めていくことが重要です。

【「補助金があるから始める」ではない】

こうした制度を見ていると、地域で新しい事業を始める際に大切なのは、

単に「どんな補助金が使えるか」を探すことだけではないと感じます。

そもそも事業を始める本人にとって、

「なぜこの事業をするのか」

「誰に必要とされるのか」

「どうやって売上をつくるのか」

「どうすれば長く続けられるのか」

といったことを考えるのは当然のことです。

そこに加えて、

「この事業によって地域にどのような価値を生み出せるのか」

という視点を持つことが、これからの地域ビジネスでは

より重要になっていくのではないかと思われます。

例えば、地域の空き店舗を活用して新しい店舗を開く場合でも、

単に「店舗を開く」というだけではありません。

地域に新しい雇用が生まれ、地元の事業者から商品やサービスを仕入れ、

住民が集まる場所ができる。

その結果として、地域の中で新しい経済の循環が生まれる。

このように、一つの事業が地域の中で

どのような役割を果たすのかまで考えることで、

事業の意味がより明確になります。

事業者の思いを「事業計画」にする

そして、こうした考えを自治体や金融機関などにも

伝えていくために重要になるのが、事業計画です。

事業者の頭の中には、

「この地域にはこんな問題がある」

「自分ならこう解決できる」

「こうすればお客様に利用してもらえる」

「将来的にはこういう事業にしたい」

という思いがあっても、それだけでは第三者には

伝わりにくい場合があります。

それを、地域の現状、顧客ニーズ、事業内容、収益の仕組み、

必要な投資、今後の展開などに整理していく。

そうすることで、単なる「アイデア」が、

具体的な「事業計画」になっていきます。

補助金や融資を受けるためだけではなく、

自分自身の事業を見つめ直し、

何を目指していくのかを整理するためにも、事業計画は意味があります。

【地域の未来をつくるのは「地域の中の事業者」】

人口減少や高齢化というと、

どうしても行政による支援策の話になりがちです。

しかし、地域の中で実際にサービスを提供し、雇用を生み、

地域のお金を循環させるのは、そこにいる事業者です。

地域の課題を「困ったこと」で終わらせるのではなく、

「新しい事業を生み出すきっかけ」として捉える。

そして、事業者自身が考えたアイデアを事業として形にし、

それを自治体や金融機関などが支えていく。

ローカル10,000プロジェクトは、

こうした地域と事業者の新しい関係を考える上でも、

興味深い取り組みだと思います。

当事務所でも、これから事業を始めようとする方のサポートを

大切な仕事の一つだと考えております。

地域にある「困りごと」が、新しいビジネスになる。

これからは、そんな地域発の事業が、

地方の未来を支える一つの力になっていくのかもしれません。

介護業界で広がるスポットワーク スキマバイト活用のメリットと課題

皆様こんにちは。

奈良市富雄の行政書士 松岡です。

最近、介護業界で「スポットワーク」と呼ばれる働き方が広がっています。

スマートフォンのアプリなどを通じて、

必要な時間だけ働く「スキマバイト」を、

介護施設が人手不足を補う手段として活用するケースが増えています。

慢性的な人手不足に悩む介護現場にとっては、

新たな人材確保の手段として期待される一方、

介護特有の安全性やケアの質をどう確保するかという課題もあります。

 

なぜ介護業界でスポットワークが広がっているのか

大きな背景にあるのが、介護業界の人手不足です。

従来の求人だけでは必要な人数を確保できず、

急な欠勤が出た場合には、現場の職員が勤務を延長したり、

別の職員が穴を埋めたりすることもあります。

こうした中、タイミーなどのスポットワークサービスや、

介護分野に特化したマッチングサービスが登場し、

必要な時間だけ人材を確保しやすくなりました。

また、介護の資格や経験があっても、

家庭の事情などからフルタイムや固定シフトでは働けない人もいます。

「週に何日も働くのは難しいけれど、数時間なら働ける」

こうした人材と介護事業者をつなぐ手段としても、

スポットワークが注目されています。

 

介護事業者にとってのメリット

スポットワークには、介護事業者側にもさまざまなメリットがあります。

 

・急な欠員に対応できる

当日の欠勤など、急に人手が足りなくなった場合でも、

必要な時間だけ人材を確保できる可能性があります。

・周辺業務を任せられる

清掃、配膳、洗濯など、資格や経験を必要としない業務を

スポットワーカーに任せることで、

資格を持つ職員が本来の介護業務に集中しやすくなります。

 

・新たな採用につながる可能性がある

実際に働いてもらうことで、事業者とワーカーの双方が

仕事との相性を確認できます。

その結果、スポットワークから

継続的な雇用につながるケースも考えられます。

 

働く側にもメリット

ワーカーにとっても、働く時間を自分で選びやすいことは

大きなメリットです。

子育てや家族の事情などで固定シフトが難しい人でも、

空いている時間を利用して働くことができます。

また、介護の仕事に興味があっても、

いきなりフルタイムで働くことに不安を感じる人にとっては、

業界を知るきっかけになる可能性があります。

特に、介護資格を持ちながら現場を離れている

「潜在的な介護人材」にとって、

新たな復職の入り口になることも期待されます。

 

一方で、介護ならではの課題も

便利な仕組みである一方、介護現場では

一般的なスキマバイトとは異なる難しさがあります。

 

・ケアの質と安全性

介護では、利用者一人ひとりの身体状況や生活習慣、

認知症の有無などを理解したうえで対応する必要があります。

そのため、初めて勤務する人に、

どこまでの業務を任せるのかは慎重に判断しなければなりません。

特に、食事介助や入浴介助など、利用者の安全に直接関わる業務については、

資格や経験だけでなく、施設側の教育・指示体制も重要になります。

 

・教育や指示の負担

毎回違う人が勤務する場合、施設のルールや仕事の流れを

その都度説明する必要があります。

人手不足を解消するために導入したはずが、

既存職員の教育負担が増えてしまう可能性もあります。

 

・利用者との関係づくり

介護では、利用者との信頼関係も重要です。

特に認知症の利用者の場合、普段と違う職員が突然対応することで、

不安や混乱につながる可能性もあります。

そのため、「人が来ればそれで解決」というわけではありません。

 

スポットワークは介護の人手不足を変えるのか

スポットワークは、介護業界の人手不足を解決する一つの手段になりつつあります。

ただし、すべての業務をスポットワーカーに任せるという考え方ではなく、

「どの業務を任せるのか」

「どのような経験・資格が必要なのか」

「誰が指示・確認するのか」

といった仕組みを施設側が整えることが重要です。

また、スポットワークを単なる「欠員の穴埋め」と考えるのではなく、

介護の仕事を知ってもらい、

将来的な採用につなげる入り口として活用する考え方もできるでしょう。

人手不足が続く中、

介護業界では「人を集める方法」そのものが変わり始めています。

今後は、スポットワークのような新しい働き方を取り入れながら、

介護の質と安全性をどう両立させるかが、

介護事業者にとって重要なテーマになりそうです。

介護事業者が新しい人材確保の仕組みを導入する際には、

単に人手を確保するだけでなく、資格や業務内容、

施設の運営体制などを含めて考えることが必要になります。

介護業界の人手不足を背景に、

こうした「働き方の変化」が今後どこまで広がるのか、

注目したいところです。

身近になった「天気痛」と体調管理

皆様こんにちは。

奈良市富雄の行政書士 松岡です。

台風が近づいてくると、

「なんとなく頭が痛い」

「肩が重い」

「体がだるい」と感じることはないでしょうか。

こうした天気の変化に伴う体調不良は、

単なる気のせいではなく、「天気痛」や「気象病」と

呼ばれることがあります。

天気痛は、気圧や気温、湿度などの変化が

体に影響することで起こると考えられており、

頭痛やめまい、肩こり、倦怠感など、

さまざまな症状が現れることがあります。

特に台風が接近すると、

短時間で気圧が大きく変化するため、

普段からこうした症状を感じている人にとっては、

つらい時期になることがあります。

なぜ天気の変化で体調が変わるのか

その原因の一つとして考えられているのが、

耳の奥にある「内耳」です。

内耳は体のバランスを保つ働きに関係する器官ですが、

気圧の変化を感じ取るセンサーのような役割もあると

考えられています。

急激な気圧変化を感じることで、

自律神経などに影響が及び、

頭痛やめまい、だるさなどにつながるとされています。

ただし、天気痛の仕組みについては、

まだすべてが解明されているわけではありません。

 

天気痛、どう対処すればいい?

では、天気痛が起きたときは、どうすればよいのでしょうか。

まず大切なのは、

「天気が悪くなると体調が崩れやすい」

と自分の傾向を知っておくことです。

例えば、気圧の変化を予測できる天気予報や「天気痛予報」などを確認し、

症状が出やすい日には無理をしないようにするだけでも、

体調管理につながります。

また、次のような方法もあります。

*睡眠時間を十分に確保する

*朝食を抜かず、規則正しい生活を心がける

*入浴などで体を温める

*肩や首を軽く動かして血行を促す

*耳を軽く引っ張ったり、回したりして刺激する

*必要に応じて市販の鎮痛薬を利用する

特に「耳を引っ張る」という方法は、

天気痛への対策として紹介されることがあります。

両耳を軽くつまみ、上下や横にゆっくり引っ張ったり、

耳全体を軽く回したりする方法です。

ただし、これらはあくまで症状を和らげるための対処法です。

天気痛にはさまざまな症状があり、

頭痛やめまいなどが強く出る場合や、頻繁に生活に支障が出る場合には、

単なる天気のせいと決めつけず、医療機関に相談することも大切です。

「雨が近づくと頭が痛くなる」

「台風が来ると体がだるい」

という経験がある方は、一度、天気と体調の変化を

記録してみるのもよいかもしれません。

天気を変えることはできませんが、

天気によって体調が変化することを知っておけば、

早めに休むなどの対策はできます。

台風が多くなるこれからの時期、

自分の体調と天気との関係を知ることも

一つの体調管理になりそうです。

フランス人と奈良

皆様こんにちは。

奈良市富雄の行政書士 松岡です。

奈良を歩いていると、外国人観光客の多さに驚くことがあります。

その中でも、多く見かけるのがフランス人観光客です。

実際、奈良県の外国人延べ宿泊者を見ると、

2024年のフランス人の割合は5.5%。

中国、アメリカ、韓国などに続く上位の国の一つとなっています。

奈良市でも、2023年の外国人宿泊者に占めるフランス人の割合は6.6%で、

国別では上位に位置しています。

なぜ、フランス人は奈良に惹かれるのでしょうか。

その理由の一つは、奈良が単なる「観光地」ではなく、

日本の歴史や宗教、美術を感じることができる場所だからではないかと

予想されます。

奈良には、法隆寺、東大寺、興福寺、薬師寺、唐招提寺など、

長い歴史を持つ寺院が数多く残っています。

そこにある仏像や建築、庭園は、単に「見る観光」だけではなく、

日本人がどのような価値観の中で文化を育ててきたのかを

感じさせてくれます。

そして、奈良に惹かれてきたフランス人は、

決して最近始まったものではありません。

フランスの文学者・外交官であるポール・クローデルは

日本文化に深い関心を持ち、奈良にも強い関心を寄せました。

また、作家・思想家のアンドレ・マルローも

日本文化に強い関心を持った人物です。

マルローの日本理解には、

駐日フランス大使を務めたクローデルらから得た影響も指摘されています。

こうした文化人が

日本の文化や美術をフランスに紹介してきた歴史を考えると、

フランス人にとって奈良は

「日本を代表する古都の一つ」というだけではなく、

日本文化そのものに触れる場所

として受け止められてきたのかもしれません。

ここで、奈良の観光について少し考えてみたいと思います。

もちろん、奈良を訪れる観光客が増えることは、

地域経済にとって大きな意味があります。

宿泊、飲食、交通、買い物、文化施設など、

観光客が増えることで恩恵を受ける事業者も増えます。

しかし、私は「観光客を増やせば増やすほど良い」という考え方には、

少し心配な部分もあります。

奈良の魅力は、京都や大阪とは少し違います。

大規模な商業施設や派手なエンターテインメントではなく、

寺社や仏像、古い町並み、自然、

そして長い歴史が積み重なった「静けさ」にあります。

だからこそ、奈良に求められているのは、観光客を大量に呼び込んで、

短時間で多くの場所を回ってもらう観光だけではないのではないでしょうか。

むしろ、

「せっかく奈良まで来たのだから、少しゆっくりしていってください」

という観光のあり方が、奈良には合っているように思います。

例えば、朝早く寺院を訪れる。

人の少ない時間に仏像と向き合う。

庭園を眺めながら時間を過ごす。

奈良の歴史を知ってから、もう一度仏像を見る。

そして、奈良で一泊して、夜の町や朝の風景まで楽しむ。

そんな「時間をかけて奈良を知る観光」が、

これからもっと評価されてもいいのではないでしょうか。

観光客の数を増やすことだけを目標にすると、

奈良の良さそのものが失われてしまう可能性があります。

一方で、奈良の文化や歴史を大切にしながら、

訪れる人に「また来たい」と思ってもらえる観光をつくることができれば、

観光客の増加と奈良らしさを両立できるかもしれません。

フランス人観光客が奈良に惹かれていることは、

そのヒントになるように思います。

奈良を訪れる人に、本当に見てほしいものは何なのか。

奈良で、どんな時間を過ごしてほしいのか。

そして、観光客が増えても、奈良らしさをどう守っていくのか。

「たくさんの人に来てもらう奈良」だけではなく、

「来た人に、奈良を深く好きになってもらう奈良」

を目指すことも、これからの奈良の観光には大切なのではないでしょうか。

できれば、奈良を訪れたフランス人の皆さんには、

急いで次の観光地へ向かうのではなく、少し足を止めて、

ゆっくりと仏教美術に浸って帰っていただきたい。

奈良には、それだけの時間をかける価値があると思います。

「リモート技工」が示すこれからの働き方

皆様こんにちは。

奈良市富雄の行政書士 松岡です。

昨日は、歯科技工士の人手不足と高齢化について書きました。

歯科技工士を目指す人が減り、働く人の高齢化も進んでいます。

では、この人手不足に対して、

これからどのような対応が考えられるのでしょうか。

その一つとして注目したいのが、

「歯科技工士のリモートワーク」です。

実は、歯科技工のリモートワークは、

すでに制度上認められています。

2022年の歯科技工士法施行規則の改正によって、

CAD/CAM装置などを使った自宅等での

リモートワークが可能であることが明確にされました。

では、歯科技工士のリモートワークとは、

どのようなものなのでしょうか。

 

「自宅で入れ歯を作る」という話ではない

リモートワークというと、

自宅で入れ歯や被せ物を作る姿を想像するかもしれません。

しかし、そういうことではありません。

ポイントになるのは、歯科技工のデジタル化です。

これまでの歯科技工では、歯科医院で型を取り、

模型などの「物」を技工所に運び、

技工士がそれを見ながら製作するという流れがありました。

ところが、口腔内スキャナーなどのデジタル技術を使えば、

歯の状態をデータとして扱うことができます。

そうすると

「模型を運ぶ」のではなく「データを送る」

という仕事の流れが可能になります。

ここが、これまでの歯科技工と大きく違うところです。

 

「作る人」から「設計する人」へ

デジタル化が進むと、歯科技工の工程を分けて考えられるようになります。

例えば、コンピューター上で歯の形や咬み合わせなどを設計する「CAD」。

そして、その設計データをもとに機械で加工する「CAM」。

さらに、その後の仕上げや調整。

こうした工程をすべて一人が同じ場所で行う必要がなくなる可能性があります。

例えば、

歯科医院でデータを取得

技工士が遠隔で設計

別の場所で加工

仕上げ・調整

という仕事の流れです。

つまり、リモート技工で大きく変わるのは、

「働く場所」だけではありません。

歯科技工士の仕事そのものが変わる可能性があります。

 

これからは「手を動かす技術」だけではない

もちろん、歯科技工士にとって

手作業の技術が必要なくなるわけではありません。

しかし、デジタル技術が広がれば、

「どのような形にするのか」

「どのように咬み合わせるのか」

「見た目と機能をどう両立させるのか」

といった、設計や判断の重要性がさらに高まるかもしれません。

「技術を持って、ものを作る仕事」から、

「技術と知識を使って、最適な形を設計する仕事」へ

歯科技工士の仕事の中身そのものが

変わっていく可能性があります。

 

人手不足にも一つの答えになるかもしれない

この変化は、人手不足への対応という意味でも注目できます。

例えば、地方では歯科技工士が不足していても、

別の地域には技術を持った技工士がいるかもしれません。

データをやり取りできれば、

これまで距離の問題で仕事を頼みにくかった歯科医院と技工士が

つながる可能性があります。

また、育児や介護などによって一度仕事を離れた技工士にとっても、

仕事内容によっては、これまでとは違った働き方ができる可能性があります。

「毎日、技工所に通う」

という働き方だけではなくなることで、

働ける人を増やせるかもしれません。

ただ、機械を入れれば解決するわけではない

もちろん、デジタル化すればすべてが解決するわけではありません。

歯科医院側にも、データを正確に取得するための設備や技術が必要です。

技工士側にも、CADなどを使いこなす新しい技術が求められます。

さらに、医療に関わるデータを扱う以上、情報管理も重要になります。

「新しい機械を導入すれば人手不足が解消する」

という単純な話ではありません。

仕事の流れそのものを見直し、

歯科医院と技工所がどのように連携するのかを考える必要があります。

 

「人を増やす」だけではない人手不足対策

歯科技工士不足というと、どうしても

「若い人にもっとこの仕事を選んでもらう」

という方向に目が向きます。

もちろん、それは重要です。

しかし、それだけではありません。

今いる技工士が長く働けるようにする。

一度離職した技工士が戻りやすくする。

地域を越えて仕事ができるようにする。

そして、一人の技工士がより効率的に仕事ができるようにする。

デジタル化やリモートワークには、こうした可能性があります。

 

仕事が変われば、働き方も変わる

歯科技工士の問題を見ていると、単純な「人手不足」だけではないように感じます。

人が減っているからこそ、これまで一人の技工士がすべて担っていた仕事を分ける。

技術をデジタル化する。

場所に縛られない仕事を増やす。

そうすることで、「人を増やす」のではなく、

「人が働き続けられる仕事の形をつくる」という考え方も必要になってきます。

これは歯科技工士だけの話ではありません。

人手不足が深刻になるこれからの日本では、

さまざまな専門職で同じような変化が起きてくるのではないかと思います。

歯科技工士のリモートワークは、単なる「在宅勤務」の話ではありません。

模型や物を運ぶ仕事から、データを活用して設計する仕事へ。

その変化は、歯科技工士という職業だけでなく、

歯科医療の仕事の進め方そのものを変えていく可能性があります。

人手不足の時代に、私たちは「人を増やす」だけでなく、

「仕事のやり方を変える」ことも考えなければならないのかもしれません。

減る歯科技工士

皆様こんにちは。

奈良市富雄の行政書士 松岡です。

歯医者さんで作ってもらう入れ歯や被せ物、詰め物。

こうした歯科治療に欠かせないものを、

実際に製作している「歯科技工士」という仕事をご存じでしょうか。

歯科医師に比べると、患者さんが直接接する機会は

少ないかもしれません。

しかし、歯科技工士がいなければ、

入れ歯や被せ物などを完成させることはできません。

その歯科技工士が今、深刻な人手不足と高齢化に直面しています。

歯科技工士を目指す人が大きく減っている

全国歯科技工士教育協議会の調べでは、

歯科技工士養成機関への入学者数は、

1993年の3,155人から2023年には718人まで減少しています。

30年間で約4分の1以下です。

学校数も72校から46校へ減少しています。

つまり、歯科技工士として働く人が減っているだけではありません。

そもそも新しく歯科技工士を目指す若者そのものが

大きく減っているということです。

一方で、現役の歯科技工士は高齢化しています。

平均年齢は約49歳で、働いている人の半数近くが50歳以上とされ、

若い世代の不足が目立っています。

このまま若い人材が入ってこなければ、

現在働いている技工士が引退することで、

さらに人手不足が進む可能性があります。

 

なぜ歯科技工士が減っているのか

背景には、いくつかの要因があります。

一つは、長時間労働と収入の問題です。

歯科技工は細かな作業が多く、

納期に合わせて製作する必要があります。

その一方で、歯科技工にかかる費用は、

歯科医療制度の中で大きく制約されています。

材料費や光熱費などが上昇しても、

技工所が自由に価格を決められるわけではありません。

そのため、

「仕事は忙しいのに利益が残りにくい」

という問題につながりやすくなっています。

さらに、最近ではCAD/CAMなどのデジタル技術や

3Dプリンターの導入も進んでいます。

技術革新によって作業を効率化できる一方、

新しい設備を導入するためには相応の資金が必要です。

 

歯科技工士は「会社員」だけではない

ここで少し興味深いのが、歯科技工士の働き方です。

歯科技工士というと、技工所で働く会社員をイメージする人が多いかもしれません。

しかし、実際にはいくつかの働き方があります。

 

1.歯科技工所に勤務する

最も一般的な働き方の一つです。

技工所に勤務し、入れ歯や被せ物などの製作を担当します。

規模の大きな技工所では、工程ごとに分業されている場合もあります。

会社員として働けば、給与が安定し、

社会保険や福利厚生を受けられるというメリットがあります。

また、個人では購入が難しいCAD/CAMなどの設備を使いながら

技術を身につけられることもあります。

 

2.独立して個人の技工所を開業する

歯科技工士には、自分で技工所を開業するという道もあります。

歯科医院から仕事を受け、製作して納品するという形です。

以前は、経験を積んだ技工士が自宅などを利用して

小規模な「個人ラボ」を開業するケースもありました。

独立すれば、自分の技術や営業力次第で仕事を広げることができます。

一方で、技術だけでは経営できません。

歯科医院への営業、受注管理、納期管理、材料の仕入れ、

設備投資、経理など、経営者としての仕事も必要になります。

特に現在は、デジタル化への対応も重要になっています。

 

3.歯科医院に直接勤務する「院内技工士」

もう一つが、歯科技工所ではなく、歯科医院に直接雇用される働き方です。

院内技工士であれば、歯科医師と近い距離で仕事をすることができます。

患者さんの口腔内の状態について歯科医師から

直接説明を受けながら製作するため、

技工所とは違ったやりがいを感じる人もいます。

また、歯科医院の診療時間に合わせた勤務となるため、

技工所とは異なる働き方ができる可能性があります。

 

「技術職」から「デジタル技術職」へ

歯科技工の世界も、昔ながらの手作業だけではありません。

現在はCAD/CAMなどを利用して、コンピューター上で

歯の形状を設計する技術が広がっています。

さらに3Dプリンターなどの技術も活用されるようになっています。

これは人手不足への対応という意味でも重要です。

すべてを人の手で作るのではなく、

デジタル技術によって作業を効率化することで、

一人の技工士が対応できる仕事量を増やせる可能性があります。

ただし、機械を導入すれば人手不足がすべて解決するわけではありません。

機械を操作する知識や技術も必要ですし、設備投資には資金が必要です。

「人を増やす」だけではなく、

「少ない人数で効率的に仕事ができる環境をつくる」ことも、

これからの歯科技工所には重要になってきそうです。

歯科技工士不足は、私たちの生活にも関係する

歯科技工士の問題は、業界の中だけの話ではありません。

技工士が不足すれば、入れ歯や被せ物などの製作に

時間がかかる可能性があります。

特に高齢者が増える中で、入れ歯を必要とする人は

少なくありません。

「歯科医院はあるのに、製作する人が足りない」

という状況になれば、将来的には歯科医療そのものにも

影響する可能性があります。

歯科技工士は、患者さんからは見えにくいところで

歯科医療を支えている仕事です。

だからこそ、今後は若い人がこの仕事を選びやすい環境をつくること、

そして技術や設備への投資ができる技工所を増やしていくことが

重要になるのではないでしょうか。

タクシー運転手は「経験がないと稼げない」?

皆様こんにちは。

奈良市富雄の行政書士 松岡です。

最近、タクシーを利用するときに

「アプリで呼ぶ」という人が増えています。

「GO」や「S.RIDE」などのタクシー配車アプリを使えば、

スマートフォンから乗車場所と目的地などを指定して、

近くのタクシーを呼ぶことができます。

電話でタクシー会社に連絡して迎えに来てもらう方法と違い、

アプリ上でタクシーを探して配車を依頼できるのが特徴です。

さらに、配車だけではありません。

対応しているサービスでは、

料金の支払いまでスマートフォン上で完了できるため、

降車時に現金を用意したり、お釣りを受け取ったりする手間も

少なくなっています。

利用者にとって便利なサービスですが、

実はこの変化はタクシー運転手の働き方にも大きな影響を与えています。

これまでのタクシー業界では、

どこに乗客がいるのかを判断する「土地勘」や「経験」が重要でした。

駅や繁華街、病院、ホテルなど、

時間帯によって人が集まる場所をベテランドライバーは経験から把握しています。

一方、経験の浅い新人ドライバーにとっては、

こうした「どこで待てばお客さんを見つけられるのか」という判断が難しい部分でし
た。

そこを変えつつあるのが、配車アプリです。

アプリを利用すると、乗客からの配車依頼と

ドライバーをシステムがマッチングしてくれます。

つまり、これまでベテランドライバーが経験によって身につけてきた

「お客さんを見つける力」の一部を、

テクノロジーが補ってくれるようになったのです。

 

若手・未経験者にも追い風

この変化によって、タクシー業界では若手や未経験者でも

収入を伸ばしやすくなっています。

20代前半のタクシードライバーの平均年収が約483万円に達し、

全産業の同年代平均を大きく上回るというデータもあります。

また、新卒でタクシー会社に入社する人も増えています。

「タクシー運転手はベテランにならなければ稼げない」

という従来のイメージが変わり、

若くても成果次第で収入を伸ばせる仕事として注目され始めています。

 

配車アプリがドライバーにもたらした変化

配車アプリのメリットは、

乗客を見つけやすくなることだけではありません。

アプリによって乗客とのマッチングが行われるため、

空車のまま走り続ける時間を減らすことができます。

また、「どこに行けばお客さんがいるのか分からない」

という新人ドライバーの負担も小さくなります。

さらに、アプリ決済を利用できれば、

現金の受け渡しやお釣りの準備など、会計にかかる手間も減ります。

ドライバーにとっては、

・乗客を見つけやすくなる

・空車時間を減らせる

・流し営業の負担を減らせる

・決済業務を効率化できる

といったメリットがあります。

 

ただし「アプリを使えば誰でも稼げる」わけではない

もちろん、配車アプリが普及したからといって、

誰でも簡単に高収入を得られるわけではありません。

重要なのは、アプリだけに頼るのではなく、

ドライバー自身の経験や判断も組み合わせることです。

例えば、雨の日、終電後、大型イベントの終了時間などは、

タクシーの需要が高まりやすい時間帯です。

こうした需要を予測して移動しながら、

アプリによる配車と従来の「流し営業」を組み合わせることで、

より効率的に仕事をすることができます。

 

「経験の差」をテクノロジーが補う時代へ

今回のタクシー業界の変化で興味深いのは、

単にタクシーが便利になったということではありません。

これまで「経験を積まなければ身につかなかった能力」の一部を、

テクノロジーが補うようになったことです。

これはタクシー業界だけの話ではありません。

営業、物流、販売、飲食など、

これまで「ベテランの経験や勘」が重要だった仕事でも、

AIやデータ、アプリなどによって、

経験の浅い人でも仕事をしやすくする仕組みが広がっています。

人手不足が続く時代には、単純に人を増やすだけではなく、

「経験の浅い人でも仕事ができる環境をつくる」

ことが重要になっているのかもしれません。

タクシー配車アプリの普及は、

私たち利用者の便利さだけでなく、

働く側の環境も変えているようです。

東京おもちゃショーから考える

皆様こんにちは。

奈良市富雄の行政書士 松岡です。

先日、「東京おもちゃショー2026」が開催されました。

「おもちゃショー」と聞くと、

子ども向けのおもちゃが並ぶイベントをイメージする方も多いかもしれません。

東京おもちゃショーは、

玩具メーカーなどが新商品や注目商品を発表する、

国内最大規模の玩具見本市です。

メーカーにとっては、単に商品を展示する場所ではありません。

小売店や流通関係者との商談の場であると同時に、

メディアや消費者に「これから何が流行するのか」を

発信する場でもあります。

そんな今年のおもちゃショーで、

改めて注目されていたのが「ボードゲーム」です。

 

ボードゲームに起きている変化

ボードゲームというと、

昔ながらの「人生ゲーム」や「すごろく」のようなものを

思い浮かべる方も多いでしょう。

しかし、最近のボードゲームはかなり変化しています。

その一つが、「短時間で遊べること」です。

15〜30分程度で一つのゲームが完結するなど、

短時間で楽しめる商品が増えています。

これは、最近よく使われる「タイパ(タイムパフォーマンス)」

という考え方とも関係しています。

限られた時間の中で、できるだけ効率よく楽しみたい。

動画も音楽も買い物も、短時間で楽しめるサービスが増えている中で、

ボードゲームにも同じような変化が起きているようです。

ただし、ここで面白いのは、ボードゲームが単純に

「効率」を追求しているわけではないことです。

 

「短時間」なのに、人と一緒に楽しめる

スマートフォンやゲーム機が普及した現在、

ゲームそのものを楽しむだけなら、一人でも簡単にできます。

それでもボードゲームが注目されている理由の一つは、

人と同じ場所で遊ぶことにあります。

カードを引いたり、相談したり、笑ったり、失敗したり。

同じゲームをしていても、

その場にいる人との会話や反応まで含めて楽しむことができます。

特に協力してゲームを進めるタイプの商品などは、

「勝ち負け」だけではなく、

参加者同士で一緒に盛り上がれることが魅力になります。

つまり最近のボードゲームは、

「時間はかけたくない。でも、人との時間は楽しみたい」

という、一見すると相反するニーズに応えようとしているのかもしれません。

 

大人が楽しめるボードゲームも増えている

もう一つの変化が、大人向けの商品が増えていることです。

例えば、投資やビジネスなど、大人が普段から関心を持っているテーマを

取り入れたゲームも登場しています。

「子どもの遊び」というイメージから、

「大人も楽しめるコミュニケーションツール」

へと、ボードゲームの位置づけが広がっているとも考えられます。

また、人気のゲームやキャラクターなどのIP(知的財産)を

ボードゲームに取り入れる動きもあります。

知っているキャラクターや作品が使われていれば、

これまでボードゲームに興味がなかった人にとっても、入り口になります。

 

なぜ、これほど商品が増えているのか

ボードゲーム市場では、商品の数そのものも増えています。

2024年時点で、企業が市販する商業用ゲームの点数は

10年前の約3.2倍になったとされています。

その背景には、デジタルゲームとは異なる商品開発のしやすさもあります。

もちろんヒット商品を作るのは簡単ではありません。

しかし、デジタルゲームのように大規模なシステム開発や

巨額の開発費が必ずしも必要ではなく、

アイデアやルール、デザインなどを工夫することで商品化を目指せます。

そのため、大手企業だけでなく、

新しいアイデアを持つメーカーやデザイナーが参入しやすい市場になっています。

 

「おもちゃ」から見える時代の変化

東京おもちゃショーを見ていると、

単に「新しいおもちゃが登場している」というだけではないことに気づきます。

そこには、今の消費者が何を求めているのかが表れています。

今回のボードゲームでいえば、

・短時間で楽しめる

・ルールが分かりやすい

・大人も楽しめる

・人と一緒に楽しめる

・知っている作品やキャラクターが使われている

といった方向です。

これはボードゲームだけの話ではありません。

忙しくなった生活の中で、「時間をかけずに楽しみたい」

という需要がある一方で、

スマートフォンなどでは得にくい「人とのつながり」も求められている。

その両方を満たす商品が、これからさらに増えていくのかもしれません。

東京おもちゃショーは、こうした新しい商品やアイデアが集まり、

これからの「遊び」の方向性を知ることができる場所でもあります。

普段何気なく遊んでいるおもちゃにも、

実はその時代の生活スタイルや価値観の変化が映し出されています。

「短時間で楽しみたい。でも、誰かと一緒に楽しみたい。」

そんな今の時代の感覚が、

ボードゲームの新しい流行にも表れているように感じます。

世界で抹茶が人気なのに、茶畑が減っている理由

皆様こんにちは。

奈良市富雄の行政書士 松岡です。

世界的な「抹茶ブーム」が続いています。

抹茶ラテや抹茶スイーツなどの人気が海外でも広がり、

日本茶の輸出は過去最高を更新する勢いです。

一方で、国内の茶産業を見ると、

茶畑の減少や農家の高齢化、煎茶の価格高騰など、

厳しい状況が続いています。

 

「世界で抹茶が人気なのに、なぜ日本の茶畑は減っているのか」。

背景には、長年にわたる国内需要の低迷と、

茶農家の高齢化があります。

農業全体と同じように、

茶業でも担い手不足が大きな問題となっています。

農林水産省の調査によると、

2026年時点で農業を主な職業とする「基幹的農業従事者」は約98万人。

その8割近くを60歳以上が占めています。

茶業も例外ではありません。

国内のお茶需要が長期的に伸び悩んできたこともあり、

収益の見通しが立ちにくい産業となれば、

後継者を確保することも難しくなります。

その結果、農家の高齢化と後継者不足が重なり、

茶畑そのものが維持できなくなるケースが増えています。

 

もう一つ見逃せないのが、茶園そのものの老朽化です。

全国茶生産団体連合会の調べでは、

樹齢30年以上の茶園が全体の約4割を占めるとされています。

茶の木は植えれば永久に収穫できるわけではありません。

一般的に、商品として出荷できる「経済樹齢」は35年前後とされ、

それを過ぎると収量や品質が低下しやすくなります。

植え替えには費用や労力が必要です。

後継者がいない農家にとっては、

古くなった茶園を更新することも難しく、

結果として茶畑が放棄されることにつながります。

 

こうした国内の構造的な問題とは対照的に、

海外では抹茶の人気が急速に高まっています

抹茶ラテや抹茶スイーツなどが欧米や東南アジアのカフェなどで広がり、

「MATCHA」は日本を代表する食品の一つとして

認知されるようになりました。

2025年には緑茶の輸出量が約70年ぶりに1万トンを突破し、

輸出の約8割を抹茶などの粉末茶が占める状況となっています。

つまり、日本国内では茶の生産基盤が縮小する一方、

海外からの需要は急速に拡大しているのです。

 

ここで新たな問題も生まれています。

海外で需要が伸びている抹茶の原料は「碾茶(てんちゃ)」です。

そのため、茶農家の中には、従来の煎茶向けの茶葉から

需要が強く価格も期待できる碾茶生産へ転換する動きが出ています。

特に鹿児島県など平坦な地域では、

大型機械を活用した大規模な生産への投資も進んでいます。

一方、中山間地域など機械化が難しい産地では

茶畑の維持が難しくなり、放棄地が広がるという

二極化も起きています。

その結果、抹茶需要が伸びる一方で、

これまで日本人が日常的に飲んできた煎茶が品薄となり、

価格が上昇するという現象も起きています。

 

世界的な抹茶ブームは、日本の茶産業にとって大きなチャンスです。

海外需要が増えれば、生産者の収益改善につながり、

新しい茶園への投資や若い担い手の参入を促す可能性があります。

ただし、需要が増えたからといって、

すぐに生産量を増やせるわけではありません。

新しい茶畑を整備し、茶の木を育て、

安定した品質で出荷できるようになるまでには時間がかかります。

さらに、抹茶の価格が上がりすぎれば、

海外のカフェや国内の飲食店、消費者が離れてしまう可能性もあります。

中国など海外でも抹茶市場への参入や生産拡大が進めば、

日本産抹茶との競争も強まっていくでしょう。

 

今回の抹茶ブームは、日本のお茶が世界で評価される大きなチャンスです。

しかし同時に、これまで地域の農家によって支えられてきた茶畑や、

私たちが日常的に飲んできた煎茶の供給基盤が弱くなっている現実も

浮き彫りにしています。

「世界で人気だから、日本のお茶産業も安心」とは単純には言えません。

海外で高く評価される抹茶を伸ばしながら、

国内で親しまれてきた煎茶文化もどう維持していくのか。

そして、農家が将来も茶業を続けられるだけの適正な価格をどう実現するのか。

抹茶ブームは、日本茶の新たな成長機会であると同時に、

日本の茶産業が抱えてきた課題を考えるきっかけにもなっています。

日本の茶畑がこれからも残っていくためには、

「売れるお茶を作る」だけでなく、

「茶畑を維持できる産業にする」という視点も重要になりそうです。

子どものスポーツ離れ

皆様こんにちは。

奈良市富雄の行政書士 松岡です。

プロ野球やJリーグなど、

日本のプロスポーツは盛り上がりを見せています。

昨年の観客動員数は、プロ野球が約2,704万人、

Jリーグが約1,350万人となり、

いずれも過去最高を記録しました。

さらに全国ではアリーナの建設も相次ぎ、

2030年ごろまでに約30施設の開業が見込まれています。

「スポーツを見る」「応援する」という文化は、

むしろ広がっているようにも見えます。

ところが、その一方で、

実際にスポーツを「する」子どもたちの数は減少しています。

日本サッカー協会によると、

小学生年代の選手登録数は2025年に約27万人となり、

10年前から11%減少しました。

野球ではさらに深刻で、小学生の硬式・軟式を合わせた競技人口が

10年間で約4割減少しています。

スポーツを見る人が増える一方で、

スポーツをする子どもは減っている。

今、日本では「見るスポーツ」と「するスポーツ」の間に、

大きな乖離が生まれています。

 

子どもからスポーツが遠くなった理由

背景には、少子化だけではなく、

子どもたちを取り巻く生活環境の変化があります。

習い事の多様化、スマートフォンや動画などによる時間の使い方の変化、

スポーツ用品や月謝などの費用、共働き家庭の増加による送迎の負担。

さらに、昔なら放課後に自然にできていた

ボール遊びなどの機会も減っています。

公園は全国的には増えているものの、

ボール遊びなどを禁止・制限している場所も

少なくありません。

スポーツをするためには、チームに所属し、

練習に通い、用具をそろえ、保護者が送迎する。

かつては「遊び」の延長だったスポーツが、

いつの間にか「遊び」の部分がなくなり、

「時間と費用をかけて行う習い事」になっていることも、

子どもたちのスポーツ離れの背景にあるそうです。

 

「早くから一つに絞る」ことへの見直し

こうした問題を考えるうえで、海外の動きも参考になります。

欧米では、子どもが幼いうちから一つの競技に絞り、

年間を通して専門的な練習を続ける「早期専門化」のあり方が

見直されています。

早い段階で一つの競技だけに集中することが、

必ずしも将来のトップ選手につながるとは限らない

という研究もあります。

複数のスポーツを経験することで、

さまざまな身体の動かし方を身につけたり、

特定の部位に負担が集中することを避けたり、

スポーツへの飽きや燃え尽きにつながるリスクを

抑えたりすることが期待されています。

そのため、

「できるだけ早く一つの競技に絞る」

という考え方から、

「幼少期は幅広く経験し、成長に応じて専門性を高める」

という育成の考え方が広がっています。

 

日本でも「マルチスポーツ」が広がる

日本でも、こうした流れは少しずつ始まっています。

スポーツ庁は「マルチスポーツ」の取り組みを進めており、

2025年度には全国3カ所で実証を行いました。

小中学生などを対象に、10種目を体験するイベントも

開催されています。

一つの競技だけを続けるのではなく、

さまざまなスポーツを経験する。

その中で「自分はこれが好き」「これなら得意かもしれない」

というものを見つけていく。

子どものスポーツの入り口が、少しずつ変わり始めています。

 

では、世界レベルの選手は育たなくならないのか

ここで気になるのが、トップアスリートの育成です。

幼い頃から一つの競技に集中しなくても、

世界で戦える選手を育てられるのでしょうか。

「子どものスポーツの裾野を広げること」と

「世界レベルの選手を育てること」は、

必ずしも対立するものではないと考えられています。

むしろ、競技人口が減ることは、

将来のトップ選手を発掘するという意味でも大きな問題になります。

例えば、多くの子どもがスポーツを始めれば、

その中から突出した才能を持つ子どもが見つかる可能性も高くなります。

逆に、スポーツを始める子どもそのものが減れば、

将来のトップ選手候補となる母数も小さくなります。

そのため世界では、

幼少期には幅広くスポーツを経験する。

その中で競技への興味や才能が見えてきた段階で、

徐々に専門性を高める。

という考え方が注目されています。

つまり、「全員を早くから英才教育する」のではなく、

「できるだけ多くの子どもをスポーツにつなげ、

その中から競技を極めたい子どもを専門的な育成につなげる」という考え方です。

 

「裾野」と「頂点」をどう両立するか

スポーツには、できるだけ多くの人が楽しむ「裾野」と、

世界を目指す競技者という「頂点」の両方が必要です。

幼い段階から一つの競技だけに絞るのではなく、

複数のスポーツを経験する。

その中で本格的に競技を続けたい子どもには、

成長段階に応じて高度な指導やトレーニングの機会を提供する。

一方で、競技選手を目指さない子どもも、

スポーツや運動を生涯にわたって楽しむ。

こうした段階的な仕組みであれば、スポーツ人口の裾野を広げながら、

トップアスリートを育てる環境も維持できます。

「子ども全員を一流選手にする」のではなく、

「できるだけ多くの子どもにスポーツとの接点をつくり、

その中から世界を目指す選手を育てていく」という考え方です。

 

日本では「学校の部活動」も変わり始めている

日本では現在、スポーツを支える仕組みそのものも変わろうとしています。

これまで中学校などの部活動は、

学校がスポーツ活動の中心的な役割を担ってきました。

しかし、少子化によって

一つの学校だけではチームを維持できないケースが増え、

教員の指導負担も課題となっています。

そこで進められているのが、学校だけで部活動を支えるのではなく、

地域のスポーツクラブや団体などが活動を担う「地域クラブ活動」への転換です。

スポーツ庁は2026年度から「改革実行期間」と位置づけ、

地域への展開を本格化させています。

2026年3月には、地域クラブ活動を持続的・安定的に運営するための

ガイドブックも公表されました。

これからは、「学校にある部活動」という一つの形だけではなく、

学校、地域クラブ、民間スポーツ団体などが、

それぞれの役割を担いながら子どものスポーツを支える形へ変わっていく可能性があ
ります。

 

「スポーツ=競技」だけではなくなる

もう一つの変化が、スポーツを「競技」だけに限定しない考え方です。

日本スポーツ協会では、幼児期からの運動遊びを重視し、

走る、跳ぶ、投げるなどの基本的な動きを楽しみながら身につける

「アクティブ・チャイルド・プログラム」を普及しています。

鬼ごっこをする。

ボールを投げる。

自転車に乗る。

親子で走る。

公園で身体を動かす。

こうした活動も、子どもにとっては身体を動かす大切な経験です。

本格的な競技に進む前に、まず「身体を動かすのは楽しい」

という経験を持つことが、スポーツとの接点を広げるうえで重要になっています。

 

子どもの可能性を広げるスポーツへ

スポーツをする意味は、将来プロ選手になることだけではありません。

走る、跳ぶ、投げる、蹴る、泳ぐ。

さまざまな身体の動かし方を経験することは、

成長期の身体づくりにもつながります。

また、いろいろな競技を経験することで、

「自分は何が好きなのか」

「何が得意なのか」

「もっとやってみたいことは何なのか」

を知るきっかけにもなります。

子どもの頃にさまざまなことを経験することは、

スポーツに限らず、その後の選択肢や可能性を広げることにもつながります。

だからこそ、スポーツの入り口が

一つの競技や一つのチームだけになってしまうのではなく、

さまざまなスポーツや運動に触れられる環境が生まれていることは、

これからの子どもたちにとって大きな意味を持つのかもしれません。

 

スポーツの未来はどう変わるのか

これからのスポーツは、

「一つの競技を早くから始め、学校やチームで続ける」

という従来型だけではなくなっていくのかもしれません。

幼い頃はいろいろなスポーツを経験し、その中から好きな競技を見つける。

本格的に競技を極めたい人には、成長段階に応じて専門的な環境を用意する。

一方で、競技選手を目指さない人も、地域や日常生活の中で身体を動かし続ける。

つまり、できるだけ多くの子どもが気軽にスポーツを始められ、

世界を目指したい子どもには、成長に応じて専門的な指導を受けられる環境がある。

そんな仕組みが、これからのスポーツには求められているのかもしれません。

「見るスポーツ」と「するスポーツ」の乖離が広がる今、

問われているのは、単に競技人口を増やすことだけではないと思います。

子どもたちがスポーツと出会い、さまざまな経験を重ね、

その中から自分の可能性を見つけていく。

そして、その先に世界を目指す道も、生涯スポーツとして楽しむ道もある。

スポーツの「入口」と「出口」の両方を広げることが、

これからのスポーツ文化の一つの方向になっていくのではないでしょうか。