
皆様こんにちは。
奈良市富雄の行政書士 松岡です。
出版業界では長年、本を作って売る際、本全体の価格(定価)に対して
以下のような割合(マージン)で利益を分け合ってきました。
出版社: 約 70%
書店: 約 22%
取次会社(問屋): 約 8%
しかし現在、本を全国の書店へ運ぶ「取次会社」が、「この分け前
(マージン)では配送費の高騰を支えきれない。
出版社の取り分を減らして、「取次の配分を増やしてほしい」と
見直しを求めています。
ここで大きく影響しているのが、物流をめぐる法改正です。
•2024年問題:
ドライバーの時間外労働が年間960時間に制限され、
人手不足と運賃上昇が本格化。
•改正物流効率化法(トラック新法の強化):
2026年4月から、一定規模以上の
「荷主(荷物を依頼する側)」に対して、
「荷待ち時間の短縮」や「積載効率の向上」
などの計画・報告が法律で義務化されました。
(守らないと罰則や社名公表も)
出版業界の物流は、トラック新法が求める
「効率化」と真っ向から衝突しています。
•低い積載効率:
出版不況による発行部数の減少や、
ネット書店の台頭で、1回あたりにトラックに
積む本の量が減っています。
•大量の返品(無駄な往復):
日本の出版界は「委託販売制度」をとっており、売れ残った本は
取次経由で出版社に戻ります。
この「行きも帰りもコストがかかる」構造が、
トラック新法の求める「効率化」の
足枷になっています。
•「標準的運賃」の浸透:
国が提示するドライバーの適正運賃(標準的運賃)の引き上げに伴い、
取次が運送会社に支払うコストは跳ね上がっています。
もし取次の要求通り、出版社の取り分
(マージン)が減らされることになれば、ドミノ倒しのように
以下のような問題が発生します。
1.取次の取り分を増やす
2.出版社の利益が削られる
3.体力の弱い中小出版社が経営危機
4.利益を確保するため本の大幅な値上げへ
•中小出版社の経営危機:
大手出版社のようにベストセラーや
デジタル(漫画アプリなど)の収入がない
中小にとって、数パーセントのマージン削減は死活問題。
専門書や多様な文化を支えるニッチな本を作る会社が
倒産しかねません。
• 書籍の大幅な値上げ:
出版社が生き残るためには、
本の「定価そのもの」を上げるしかありません。
すでに用紙代や印刷代の高騰で値上がりが
続いていますが、さらに1冊あたりの価格が
数百円規模で跳ね上がる可能性があります。
これまでは「再販制度(全国どこでも同じ定価で本が買える仕組み)」
によって、地方の小さな書店にも同じように本が届いていました。
しかし、物流コストがそれを許さない時代になっています。
今後は、単なる利益の奪い合いではなく、
以下のような「出版物流そのものの構造改革」
が急務となります。
• 共同配送:
ライバル関係にある取次同士が手を組み、
同じトラックで本を運ぶ。
•直取引の増加:
取次を通さず、出版社と書店がダイレクトに取引して
物流をスリム化する。
•返品率の改善:
AIなどを活用して、最初から売れる分だけを適切に刷って届ける。
私たちは本の値上げを見ると
負担に感じがちですが、その背景にはこうした事情があることも
知っておきたいところです。
電子書籍が広がる一方で、紙の本が
これからどのように残っていくのか、
今後の動向に注目したいと思います。