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子どものスポーツ離れ

皆様こんにちは。

奈良市富雄の行政書士 松岡です。

プロ野球やJリーグなど、

日本のプロスポーツは盛り上がりを見せています。

昨年の観客動員数は、プロ野球が約2,704万人、

Jリーグが約1,350万人となり、

いずれも過去最高を記録しました。

さらに全国ではアリーナの建設も相次ぎ、

2030年ごろまでに約30施設の開業が見込まれています。

「スポーツを見る」「応援する」という文化は、

むしろ広がっているようにも見えます。

ところが、その一方で、

実際にスポーツを「する」子どもたちの数は減少しています。

日本サッカー協会によると、

小学生年代の選手登録数は2025年に約27万人となり、

10年前から11%減少しました。

野球ではさらに深刻で、小学生の硬式・軟式を合わせた競技人口が

10年間で約4割減少しています。

スポーツを見る人が増える一方で、

スポーツをする子どもは減っている。

今、日本では「見るスポーツ」と「するスポーツ」の間に、

大きな乖離が生まれています。

【子どもからスポーツが遠くなった理由】

背景には、少子化だけではなく、

子どもたちを取り巻く生活環境の変化があります。

習い事の多様化、スマートフォンや動画などによる時間の使い方の変化、

スポーツ用品や月謝などの費用、共働き家庭の増加による送迎の負担。

さらに、昔なら放課後に自然にできていた

ボール遊びなどの機会も減っています。

公園は全国的には増えているものの、

ボール遊びなどを禁止・制限している場所も

少なくありません。

スポーツをするためには、チームに所属し、

練習に通い、用具をそろえ、保護者が送迎する。

かつては「遊び」の延長だったスポーツが、

いつの間にか「遊び」の部分がなくなり、

「時間と費用をかけて行う習い事」になっていることも、

子どもたちのスポーツ離れの背景にあるそうです。

【「早くから一つに絞る」ことへの見直し】

こうした問題を考えるうえで、海外の動きも参考になります。

欧米では、子どもが幼いうちから一つの競技に絞り、

年間を通して専門的な練習を続ける「早期専門化」のあり方が

見直されています。

早い段階で一つの競技だけに集中することが、

必ずしも将来のトップ選手につながるとは限らない

という研究もあります。

複数のスポーツを経験することで、

さまざまな身体の動かし方を身につけたり、

特定の部位に負担が集中することを避けたり、

スポーツへの飽きや燃え尽きにつながるリスクを

抑えたりすることが期待されています。

そのため、

「できるだけ早く一つの競技に絞る」

という考え方から、

「幼少期は幅広く経験し、成長に応じて専門性を高める」

という育成の考え方が広がっています。

【日本でも「マルチスポーツ」が広がる】

日本でも、こうした流れは少しずつ始まっています。

スポーツ庁は「マルチスポーツ」の取り組みを進めており、

2025年度には全国3カ所で実証を行いました。

小中学生などを対象に、10種目を体験するイベントも

開催されています。

一つの競技だけを続けるのではなく、

さまざまなスポーツを経験する。

その中で「自分はこれが好き」「これなら得意かもしれない」

というものを見つけていく。

子どものスポーツの入り口が、少しずつ変わり始めています。

【では、世界レベルの選手は育たなくならないのか】

ここで気になるのが、トップアスリートの育成です。

幼い頃から一つの競技に集中しなくても、

世界で戦える選手を育てられるのでしょうか。

「子どものスポーツの裾野を広げること」と

「世界レベルの選手を育てること」は、

必ずしも対立するものではないと考えられています。

むしろ、競技人口が減ることは、

将来のトップ選手を発掘するという意味でも大きな問題になります。

例えば、多くの子どもがスポーツを始めれば、

その中から突出した才能を持つ子どもが見つかる可能性も高くなります。

逆に、スポーツを始める子どもそのものが減れば、

将来のトップ選手候補となる母数も小さくなります。

そのため世界では、

幼少期には幅広くスポーツを経験する。

その中で競技への興味や才能が見えてきた段階で、

徐々に専門性を高める。

という考え方が注目されています。

つまり、「全員を早くから英才教育する」のではなく、

「できるだけ多くの子どもをスポーツにつなげ、

その中から競技を極めたい子どもを専門的な育成につなげる」という考え方です。

【「裾野」と「頂点」をどう両立するか】

スポーツには、できるだけ多くの人が楽しむ「裾野」と、

世界を目指す競技者という「頂点」の両方が必要です。

幼い段階から一つの競技だけに絞るのではなく、

複数のスポーツを経験する。

その中で本格的に競技を続けたい子どもには、

成長段階に応じて高度な指導やトレーニングの機会を提供する。

一方で、競技選手を目指さない子どもも、

スポーツや運動を生涯にわたって楽しむ。

こうした段階的な仕組みであれば、スポーツ人口の裾野を広げながら、

トップアスリートを育てる環境も維持できます。

「子ども全員を一流選手にする」のではなく、

「できるだけ多くの子どもにスポーツとの接点をつくり、

その中から世界を目指す選手を育てていく」という考え方です。

【日本では「学校の部活動」も変わり始めている】

日本では現在、スポーツを支える仕組みそのものも変わろうとしています。

これまで中学校などの部活動は、

学校がスポーツ活動の中心的な役割を担ってきました。

しかし、少子化によって

一つの学校だけではチームを維持できないケースが増え、

教員の指導負担も課題となっています。

そこで進められているのが、学校だけで部活動を支えるのではなく、

地域のスポーツクラブや団体などが活動を担う「地域クラブ活動」への転換です。

スポーツ庁は2026年度から「改革実行期間」と位置づけ、

地域への展開を本格化させています。

2026年3月には、地域クラブ活動を持続的・安定的に運営するための

ガイドブックも公表されました。

これからは、「学校にある部活動」という一つの形だけではなく、

学校、地域クラブ、民間スポーツ団体などが、

それぞれの役割を担いながら子どものスポーツを支える形へ変わっていく可能性があ
ります。

【「スポーツ=競技」だけではなくなる】

もう一つの変化が、スポーツを「競技」だけに限定しない考え方です。

日本スポーツ協会では、幼児期からの運動遊びを重視し、

走る、跳ぶ、投げるなどの基本的な動きを楽しみながら身につける

「アクティブ・チャイルド・プログラム」を普及しています。

鬼ごっこをする。

ボールを投げる。

自転車に乗る。

親子で走る。

公園で身体を動かす。

こうした活動も、子どもにとっては身体を動かす大切な経験です。

本格的な競技に進む前に、まず「身体を動かすのは楽しい」

という経験を持つことが、スポーツとの接点を広げるうえで重要になっています。

【子どもの可能性を広げるスポーツへ】

スポーツをする意味は、将来プロ選手になることだけではありません。

走る、跳ぶ、投げる、蹴る、泳ぐ。

さまざまな身体の動かし方を経験することは、

成長期の身体づくりにもつながります。

また、いろいろな競技を経験することで、

「自分は何が好きなのか」

「何が得意なのか」

「もっとやってみたいことは何なのか」

を知るきっかけにもなります。

子どもの頃にさまざまなことを経験することは、

スポーツに限らず、その後の選択肢や可能性を広げることにもつながります。

だからこそ、スポーツの入り口が

一つの競技や一つのチームだけになってしまうのではなく、

さまざまなスポーツや運動に触れられる環境が生まれていることは、

これからの子どもたちにとって大きな意味を持つのかもしれません。

【スポーツの未来はどう変わるのか】

これからのスポーツは、

「一つの競技を早くから始め、学校やチームで続ける」

という従来型だけではなくなっていくのかもしれません。

幼い頃はいろいろなスポーツを経験し、その中から好きな競技を見つける。

本格的に競技を極めたい人には、成長段階に応じて専門的な環境を用意する。

一方で、競技選手を目指さない人も、地域や日常生活の中で身体を動かし続ける。

つまり、できるだけ多くの子どもが気軽にスポーツを始められ、

世界を目指したい子どもには、成長に応じて専門的な指導を受けられる環境がある。

そんな仕組みが、これからのスポーツには求められているのかもしれません。

「見るスポーツ」と「するスポーツ」の乖離が広がる今、

問われているのは、単に競技人口を増やすことだけではないと思います。

子どもたちがスポーツと出会い、さまざまな経験を重ね、

その中から自分の可能性を見つけていく。

そして、その先に世界を目指す道も、生涯スポーツとして楽しむ道もある。

スポーツの「入口」と「出口」の両方を広げることが、

これからのスポーツ文化の一つの方向になっていくのではないでしょうか。