大企業が手放す事業を中堅企業が買収 撤退事業に新たな成長のチャンス

皆様こんにちは。

奈良市富雄の行政書士 松岡です。

 

企業が成長するためには、新しい商品やサービスを開発するだけでなく、

すでにある事業を引き継ぐという方法もあります。

少し前になりますが、2026年10月26日付の日本経済新聞に、

大企業が手放す事業を中堅企業が買収し、

自社の成長につなげる動きが紹介されていました。

記事で取り上げられたのは、

物流不動産を手がけるシーアールイー(CRE)による大阪倉庫の買収と、

衛生用品の製造機械を主力とする瑞光による

ユニチカの不織布事業の譲り受けです。

一見すると異なる業界の話ですが、どちらにも共通するのは、

売り手にとっては手放す事業が、

買い手にとっては成長の可能性を持つ事業だったという点です。

 

大企業が事業を手放す理由

大企業であっても、すべての事業を同じように成長させられるわけではありません。

市場環境が変われば、以前は収益を生んでいた事業が伸び悩むこともあります。

また、今後の成長が期待できる分野に、

人材や資金などの経営資源を集中させたいと考えることもあります。

そこで選択肢となるのが、事業の売却です。

売却は、必ずしも会社全体の業績が悪化した結果とは限りません。

自社で経営を続けるよりも、

その事業を成長させられる別の企業に引き継いでもらう方がよい、

という判断もあります。

こうした事業の切り出しは「カーブアウト」と呼ばれ、

買収を通じて事業を引き継ぐM&Aの一つの形になっています。

事例① 物流不動産のCREが大阪倉庫を買収

物流施設の開発や管理を手がけるCREは、

NIPPON EXPRESSホールディングス(NXHD)の子会社だった大阪倉庫の株式を

取得しました。

大阪倉庫は、倉庫事業に加え、物流施設の賃貸や管理などを手がけています。

危険物を扱う倉庫に関する知識や経験も持っています。

CREにとって、この買収には大きく二つの意味があります。

一つは、関西での事業基盤を強化できることです。

これまで関東を中心としていた事業を関西へ広げるうえで、

既存の拠点や事業運営のノウハウを引き継げます。

もう一つは、大阪倉庫が持つ危険物管理の知識を活用できることです。

一般的な物流施設だけでなく、

危険物と完成品を扱う倉庫を組み合わせた施設開発など、

新たな事業展開も考えられます。

ゼロから拠点をつくり、人材を育て、取引先を開拓するのではなく、

すでに事業を行っている企業を引き継ぐことで、

成長に必要な時間を短縮できる可能性があります。

 

事例② 機械メーカーの瑞光が不織布事業を譲り受け

もう一つの事例は、

紙おむつなどの衛生用品を製造する機械を手がける瑞光です。

瑞光は、ユニチカが営んでいたスパンレース不織布事業を譲り受けました。

ユニチカ側では、コロナ禍を挟んだ需要の変動や、

ほかの素材との競争激化などにより、

収益面で厳しい状況が続いていました。

一方、瑞光にとって不織布は、

自社の主力製品である衛生用品製造機械と関係の深い素材です。

紙おむつなどの製造機械を販売するだけでなく、

その機械で使われる素材の製造にも事業を広げることで、

顧客である衛生用品メーカーに、

これまで以上に幅広い提案ができる可能性があります。

たとえば、素材の特性や製造工程への理解が深まれば、

顧客が抱える課題をより詳しく把握し、

機械の改良や新たな製品開発に生かせるかもしれません。

これは、単に売上規模を拡大するための買収ではありません。

既存事業と関連する分野を取り込むことで、

顧客に提供できる価値を広げようとする戦略と考えられます。

 

二つの事例から見えてくること

今回の二つの事例を比べると、買収の狙いの違いが見えてきます。

CREは、既存の事業基盤を引き継ぐことで、

主に地域と事業領域の拡大を目指しています。

一方、瑞光は、機械の製造から素材の製造へと事業領域を広げ、

顧客への提供価値を高めようとしています。

つまり、企業買収には、同じ事業を別の地域に広げる方法もあれば、

関連する事業を取り込んで自社の強みを深める方法もあるのです。

重要なのは、買収する事業が有名かどうか、

規模が大きいかどうかだけではなく

自社の既存事業とどのようにつながり、

どんな相乗効果を生み出せるかという視点だと思います。

 

中小企業にとっても他人事ではない

こうした動きは、大企業と中堅企業だけの話ではありません。

中小企業にとっても、既存の事業を引き継ぐことは、

成長や事業承継の選択肢になり得ます。

たとえば、後継者が見つからない会社の事業を引き継ぐ、

既存の取引先や技術を持つ会社を買収する、

自社の商品と相性のよい事業を取り込むといった方法です。

もちろん、買収すれば必ず成功するわけではありません。

売上や利益だけでなく、従業員、取引先との契約、

設備の状態、必要な許認可、買収後の運営費用なども

確認しなければなりません。

それでも、自社で一から事業を立ち上げる以外に、

すでにある事業を引き継いで成長する道があることは、

経営を考えるうえで知っておきたいポイントであると思います。

企業の成長というと、新規事業の開発や設備投資に目が向きがちです。

しかし、ほかの企業が手放す事業の中に、

自社の強みを生かせる機会が隠れているかもしれません。

事業を手放す企業と、その事業を生かせる企業。

それぞれの経営判断が、新たな成長につながっていくと言えます。