
皆様こんにちは。
奈良市富雄の行政書士 松岡です。
世界的な「抹茶ブーム」が続いています。
抹茶ラテや抹茶スイーツなどの人気が海外でも広がり、
日本茶の輸出は過去最高を更新する勢いです。
一方で、国内の茶産業を見ると、
茶畑の減少や農家の高齢化、煎茶の価格高騰など、
厳しい状況が続いています。
「世界で抹茶が人気なのに、なぜ日本の茶畑は減っているのか」。
背景には、長年にわたる国内需要の低迷と、
茶農家の高齢化があります。
農業全体と同じように、
茶業でも担い手不足が大きな問題となっています。
農林水産省の調査によると、
2026年時点で農業を主な職業とする「基幹的農業従事者」は約98万人。
その8割近くを60歳以上が占めています。
茶業も例外ではありません。
国内のお茶需要が長期的に伸び悩んできたこともあり、
収益の見通しが立ちにくい産業となれば、
後継者を確保することも難しくなります。
その結果、農家の高齢化と後継者不足が重なり、
茶畑そのものが維持できなくなるケースが増えています。
もう一つ見逃せないのが、茶園そのものの老朽化です。
全国茶生産団体連合会の調べでは、
樹齢30年以上の茶園が全体の約4割を占めるとされています。
茶の木は植えれば永久に収穫できるわけではありません。
一般的に、商品として出荷できる「経済樹齢」は35年前後とされ、
それを過ぎると収量や品質が低下しやすくなります。
植え替えには費用や労力が必要です。
後継者がいない農家にとっては、
古くなった茶園を更新することも難しく、
結果として茶畑が放棄されることにつながります。
こうした国内の構造的な問題とは対照的に、
海外では抹茶の人気が急速に高まっています。
抹茶ラテや抹茶スイーツなどが欧米や東南アジアのカフェなどで広がり、
「MATCHA」は日本を代表する食品の一つとして
認知されるようになりました。
2025年には緑茶の輸出量が約70年ぶりに1万トンを突破し、
輸出の約8割を抹茶などの粉末茶が占める状況となっています。
つまり、日本国内では茶の生産基盤が縮小する一方、
海外からの需要は急速に拡大しているのです。
ここで新たな問題も生まれています。
海外で需要が伸びている抹茶の原料は「碾茶(てんちゃ)」です。
そのため、茶農家の中には、従来の煎茶向けの茶葉から、
需要が強く価格も期待できる碾茶生産へ転換する動きが出ています。
特に鹿児島県など平坦な地域では、
大型機械を活用した大規模な生産への投資も進んでいます。
一方、中山間地域など機械化が難しい産地では、
茶畑の維持が難しくなり、放棄地が広がるという
二極化も起きています。
その結果、抹茶需要が伸びる一方で、
これまで日本人が日常的に飲んできた煎茶が品薄となり、
価格が上昇するという現象も起きています。
世界的な抹茶ブームは、日本の茶産業にとって大きなチャンスです。
海外需要が増えれば、生産者の収益改善につながり、
新しい茶園への投資や若い担い手の参入を促す可能性があります。
ただし、需要が増えたからといって、
すぐに生産量を増やせるわけではありません。
新しい茶畑を整備し、茶の木を育て、
安定した品質で出荷できるようになるまでには時間がかかります。
さらに、抹茶の価格が上がりすぎれば、
海外のカフェや国内の飲食店、消費者が離れてしまう可能性もあります。
中国など海外でも抹茶市場への参入や生産拡大が進めば、
日本産抹茶との競争も強まっていくでしょう。
今回の抹茶ブームは、日本のお茶が世界で評価される大きなチャンスです。
しかし同時に、これまで地域の農家によって支えられてきた茶畑や、
私たちが日常的に飲んできた煎茶の供給基盤が弱くなっている現実も
浮き彫りにしています。
「世界で人気だから、日本のお茶産業も安心」とは単純には言えません。
海外で高く評価される抹茶を伸ばしながら、
国内で親しまれてきた煎茶文化もどう維持していくのか。
そして、農家が将来も茶業を続けられるだけの適正な価格をどう実現するのか。
抹茶ブームは、日本茶の新たな成長機会であると同時に、
日本の茶産業が抱えてきた課題を考えるきっかけにもなっています。
日本の茶畑がこれからも残っていくためには、
「売れるお茶を作る」だけでなく、
「茶畑を維持できる産業にする」という視点も重要になりそうです。