オフィシャルブログ

広がる空き家問題とこれからの選択肢

皆様こんにちは。

奈良市富雄の行政書士 松岡です。

 

自分が亡くなった後、今住んでいる家をどうするのか。

かつては、親が住んでいた家を子どもが引き継ぎ、

住み続けることが一般的な選択肢の一つでした。

しかし、家族のあり方や暮らし方が変化するなかで、

住まいの引き継ぎに対する考え方も変わりつつあります。

リクルートの意識調査では、

50〜69歳で子どもがいる人のうち、

自分の死後に住まいを子どもに引き継いでほしいと考える人は

少数にとどまりました。この結果から見えてくるのは、

相続の問題だけではありません。親が大切にしてきた家を、

子どもが引き継ぐとは限らない。

そうなると、個々の家庭の問題だった住まいの行き先が、

空き家の増加や地域の暮らしを支える仕組みとも深く関わってきます。

 

子どもに家を引き継いでほしい人は少数派に

今回の調査で示された数字は、次のとおりです。

【調査項目と 割合】
自分の死後、子どもに住まいを引き継いでほしい →4.4%
できれば子どもに住んでほしい →7.3%

(調査対象は50〜69歳で子どもがいる人、調査時期は3月です。)

この2つの回答を合わせても

子どもに家を引き継いでほしい人は全体の11.7%です。

もちろん、「子どもに住んでほしくない」という回答が、

そのまま家を処分したいという意味になるわけではありません。

売却したい人もいれば、賃貸に出したい人、

自分が亡くなった後のことはまだ決めていない人もいるでしょう。

ただ、少なくとも、親が住んでいた家を子どもが引き継いで住むという形が、

必ずしも望ましいとは考えられていないことがうかがえます。

その背景には、子ども世代がすでに自分の住まいを持っていることや、

仕事や結婚などによって親とは異なる地域で生活していることも

考えられます。
親にとっては思い出の詰まった家でも、子どもにとっては、

住む予定のない住宅かもしれません。

家を相続することが、必ずしも子どもにとって喜ばしいこととは限らない。

そんな時代に変わってきているのではないでしょうか。

 

家族の問題が、社会全体の空き家問題へ

住む人がいなくなった家は、

相続人がいれば自動的に解決するわけではありません。

  • 遠方に住んでいるため管理が難しい。
  • 売却したくても買い手が見つからない。
  • 建物が古く、修繕費がかかる。

こうした事情が重なると、住宅が使われないまま残ってしまう可能性があります。

空き家が増えることは、所有者や相続人だけの問題ではありません。

  • 建物の老朽化による倒壊や防災上のリスク
  • 雑草や害虫、ごみなどによる周辺環境への影響
  • 地域の人口減少や商店街の活力低下
  • 住宅があるにもかかわらず、新しく住みたい人が住めないというミスマッチ

 

つまり、住まいの引き継ぎ手がいないという個々の家庭の問題が、

地域全体の課題につながっていきます。

一方で、空き家があるということは、見方を変えれば、

すでに建物という資源が地域に存在しているということでもあります。

新しく建物を建てなくても、既存の住宅を活用することで、

移住者の住まいや地域の活動拠点を生み出せる可能性があります。

大切なのは、家を誰が相続するかだけではなく、

その家をこれから誰が使い、

地域の中でどのような役割を果たせるかという視点だと思います。

 

住まいを地域に開く、新しい活用方法

子どもが住まない住宅の行き先は、売却や通常の賃貸だけではありません。

地域の需要に合わせて活用する方法も考えられます。

 

・ 一定期間住んだ後に家を譲り受ける「譲渡型賃貸」

住宅を一定期間賃貸し、その後、入居者に譲渡することを

契約で定める仕組みです。

例えば、住宅を取得するための資金が十分にない人や、

住宅ローンを組むことが難しい人にとって、

住まいを確保する選択肢になる可能性があります。

所有者にとっても、将来的な住宅の引き継ぎ先を見つける

一つの方法になります。

ただし、契約の内容によって、

賃貸借と売買・贈与の関係や税金、修繕費の負担などが異なります。

家賃を支払えば自動的に所有権が移るわけではないため、

事前の契約設計が重要です。

 

・地域の人が集まる居場所として活用する

住宅を地域の交流拠点として活用する方法もあります。

例えば、日替わりカフェや子ども食堂、

地域住民の交流スペース、ワークショップの会場などです。

空き家を単に住宅として貸し出すのではなく、地域の人が集まり、

活動できる場所へと変えていく考え方です。

また、移住を検討している人向けのお試し住宅として活用すれば、

地域の暮らしを実際に体験してもらうこともできます。

特に人口減少が進む地域では、

住宅を確保することが移住や定住を支える取り組みにつながる可能性があります。

 

・ シェアハウスや仕事場として活用する

家族で住むことを前提とした住宅を、

複数の人が利用する空間に変える方法です。

例えば、シェアハウスとして単身者や移住者に貸し出したり、

コワーキングスペースや小規模事業者の仕事場として活用したりすることが

考えられます。

在宅勤務や小規模な起業など、働き方が多様化するなかで、

住宅の一部を仕事や事業に利用する需要も考えられます。

もちろん、用途変更や建築基準、消防、設備などの条件を

確認する必要がありますが、住宅の立地や間取りによっては、

新しい事業の拠点になる可能性もあります。

 

・自治体の空き家バンクや民間団体を通じて次の使い手を探す

空き家を自治体に寄付すれば、そのまま引き取ってもらえるとは限りません。

自治体にとっても、住宅の維持管理や修繕には費用がかかるため、

寄付を受け入れるかどうかは個別の判断になります。

そこで選択肢となるのが、自治体の空き家バンクや不動産事業者などを通じて、

次の所有者や利用者を探す方法です。

また、地域で福祉や子育て支援などに取り組むNPO法人などが、

活動拠点として住宅を必要としている場合もあります。

ただし、NPOであれば必ず引き取れるわけではなく、

建物の状態や維持管理費、利用目的などを踏まえた調整が必要です。

家を手放すことと、地域で活用してもらうこと。

その両方を実現するには、所有者だけでなく、

受け入れる側の負担や地域の需要も考える必要があります。

 

これからは「誰に残すか」だけでなく「どう活かすか」

これまで住宅の相続というと、親から子へ、

家族の中で財産を引き継ぐという考え方が中心でした。

しかし、子どもが必ずしも親の家に住むとは限らない時代には、

住まいの行き先を家族だけで考えることが難しくなってきています。

住宅を売却するのか、貸し出すのか、地域に開くのか。

それぞれの家の立地や建物の状態、所有者の希望によって、

選択肢は異なります。

奈良県内でも、人口減少が進む地域がある一方、

歴史的な町並みや古民家など、地域ならではの住宅資源があります。

こうした住宅を、移住者の住まいや地域の交流拠点、

小さな事業の場として活用できれば、

空き家対策と地域の活性化を結びつけることも考えられます。

家は、所有者にとって大切な財産であると同時に、

地域にとっても暮らしや活動を支える資源です。

子どもに家を残すことだけが、住まいを次の世代につなぐ方法ではありません。

これからは、家族の中で引き継ぐという選択に加えて、

地域の中で住まいを活かし、次に必要とする人へつないでいくことも、

空き家問題を考えるうえで大切になっていくのではないでしょうか。