日別アーカイブ: 2026年10月21日

旅行会社は「手配する」から「体験をつくる」へ。スポーツホスピタリティに広がる商機

皆様こんにちは。

奈良市富雄の行政書士 松岡です。

 

前回は、スポーツ観戦に食事や専用ラウンジ、

特別な体験などを組み合わせた「スポーツホスピタリティ」を紹介しました。

高額な観戦パッケージが登場している背景には、

スポーツ観戦の楽しみ方が広がっていることがあります。

そして、この分野で新たな展開を見せているのが旅行業界です。

旅行会社といえば、航空券やホテル、

観光ツアーなどを手配する仕事を思い浮かべる方が多いでしょう。

しかし、スポーツホスピタリティは、

そうした従来の仕事とは少し違った可能性を持っています。

旅行会社が力を入れる理由

インターネットの普及によって、旅行の予約方法は大きく変わりました。

以前は、旅行会社に相談して航空券やホテルを手配することが一般的でしたが、

現在は予約サイトやアプリを使い、

自分で比較しながら手配する人も増えています。

宿泊施設や交通機関が自社サイトで直接販売する機会も広がっています。

こうした環境では、単純な予約や手配だけでは、

価格や利便性の競争になりやすくなります。

そこで重要になるのが、旅行会社だからこそ提供できる価値です。

例えば、人気スポーツの公式観戦チケットに、

ホテル、送迎、食事、現地での特別な体験を組み合わせる。

あるいは、企業の取引先招待や社員向けイベントの

企画から運営までを担う。

このように、個々のサービスを手配するだけでなく、

顧客が求める体験全体を組み立てることで、独自の商品を生み出せます。

MLBとの連携で広がる観戦ビジネス

JTBの取り組みは、その具体例です。

JTBは2024年、MLBのオフィシャルスポンサーとなり、

アジアにおけるトラベル&ホスピタリティ事業の

公式パートナー権を獲得しました。

2025年には、東京シリーズの公式観戦券付き

ホスピタリティパッケージを販売。

さらに、同年7月には韓国の現地法人を通じて、

アジア地域でのMLB観戦ツアーの販売を始めたと発表しています。

これは、単に日本国内の観戦客を対象にするだけでなく、

海外のファンを試合開催地へ呼び込む事業にもつながっています。

人気スポーツの公式パートナーとしての立場を生かし、

通常の旅行商品とは異なる体験を提供する。

こうした展開は、旅行会社が持つ企画力や手配力を、

新しい分野で活用する動きといえます。

 

旅行業界全体で進む取り組み

この動きは、JTBだけのものではありません。

2026年4月には、

近畿日本ツーリスト、JTB、東武トップツアーズ、ぴあの4社が共同で

「一般社団法人スポーツホスピタリティ推進協議会」を設立しました。

同協議会は、スポーツホスピタリティの普及や

担い手となる事業者の育成、

スポーツを通じた交流や地域活性化などを目指しています。

また、今月に開催された第20回アジア競技大会(愛知・名古屋)に関連して、

競技会場内の個室で観戦や食事を楽しむサービスと、

会場外の交流空間を組み合わせた取り組みも紹介されています。

スポーツを観戦するだけでなく、

食や文化、地域の魅力に触れる機会をつくる。

こうした仕組みが広がれば、競技会場だけでなく、

周辺の飲食店や宿泊施設などにも需要が波及する可能性があります。

 

中小企業にも参考になる考え方

スポーツホスピタリティは、

大規模なイベントや旅行会社だけの話に見えるかもしれません。

しかし、その背景にある考え方は、

地域の中小企業にも参考になります。

例えば、飲食店が料理を提供するだけでなく、

地域の食材を生産者の話とともに楽しめる企画を用意する。

宿泊施設が部屋を提供するだけでなく、

地元の文化や暮らしに触れられる体験を組み合わせる。

あるいは、専門的なサービスを提供する会社が、

サービスそのものに加えて、

相談前後のサポートや利用後のフォローまで含めて商品を設計する。

こうした工夫によって、

顧客にとっての価値を高められる場合があります。

もちろん、付加価値をつければ

必ず売上や利益が増えるわけではありません。

顧客が何を求めているのかを把握し、

提供にかかる費用や運営の負担も考える必要があります。

大切なのは、単に価格を上げることではなく、

顧客がその商品やサービスを選ぶ理由をつくることです。

 

商品を売るだけでなく、体験を企画する

スポーツホスピタリティの動きから見えてくるのは、

既存の商品やサービスに新たな価値を加えようとする流れです。

旅行会社は、チケットや宿泊を手配するだけでなく、

観戦を中心とした特別な時間を企画する。

スポーツ団体は、試合を開催するだけでなく、

地域や企業との交流の場をつくる。

それぞれが持つ強みを組み合わせることで、

新しい需要が生まれる可能性があります。

人口減少や人手不足、価格競争など、

さまざまな課題に直面する企業にとって、

新しい商品を一から開発することだけが成長の方法ではありません。

今ある商品やサービスを、誰に、どのような価値とともに届けるのか。

スポーツホスピタリティは、

そんな視点から自社の事業を考えるヒントにもなりそうです。