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日別アーカイブ: 2026年10月8日

「身寄りのない高齢者」を社会で支える時代へ。2026年の福祉制度改正で何が変わる?

皆様こんにちは。

奈良市富雄の行政書士 松岡です。

 

前回、認知症などで判断能力が十分でない人を支える

「日常生活自立支援事業」について取り上げました。

この制度では、福祉サービスの利用手続きや日常的なお金の管理などを

支援しています。

ところが、令和7年度の調査では、社会福祉協議会側の事情によって利用開始まで

時間がかかっている人が、全国で3,931人確認されています。

必要な人に支援を届けること自体が課題になっているわけです。

その一方で、国は2026年、こうした支援の対象や内容を

さらに広げるための法律改正を行いました。

今回は、この制度改正について見ていきます。

 

なぜ、制度を見直す必要があるのか

背景にあるのは、日本の社会構造の変化です。

一人暮らしの高齢者が増え、家族や親族が近くにいない人も

珍しくなくなっています。

また、家族がいても、遠方に住んでいたり、仕事や介護などの事情から、

日常的な支援をすることが難しい場合があります。

これまで家族や親族が担ってきた、

・日常生活の支援
・入院や施設入所の手続き
・緊急時の連絡
・亡くなった後の葬儀や納骨
・家財の整理や処分

といった役割を、誰が担うのかという問題が出てきています。

厚生労働省も、こうした「頼れる身寄りがいない高齢者等」

の生活上の課題が顕在化していることを、

今回の制度見直しの背景として挙げています。

 

2026年、社会福祉法などが改正

2026年6月25日、「社会福祉法等の一部を改正する法律」が公布されました。

基本的な施行日は2027年4月1日ですが、

改正内容によって施行時期は異なります。

今回の改正では、人口減少や福祉ニーズの多様化などを踏まえ、

地域の相談支援体制や福祉サービス、人材確保などについて

幅広い見直しが行われています。

その中でも、今回のテーマに関係するのが、

「頼れる身寄りがいない高齢者等」への支援です。

 

「福祉サービス利用援助事業」が広がる

これまで社会福祉法には、「福祉サービス利用援助事業」が

位置づけられていました。

これは、判断能力が十分でない人を対象に、

福祉サービスの利用に関する援助や日常的な金銭管理などを行うものです。

今回の改正では、この事業を見直し、

「福祉サービス・保健医療サービス等利用援助事業」

として位置づけることになりました。

そして、対象者として新たに「頼れる身寄りがいない高齢者等」が

加えられています。

つまり、これまでのように「判断能力が十分でない人」だけを

対象とするのではなく、判断能力に問題がなくても、

身寄りがないことで生活上の支援が必要になる人も、

制度の対象として明確に位置づけていく方向です。

 

支援の内容も広がる

今回の見直しで注目したいのが、支援の範囲です。

これまでの日常生活の支援に加えて、

・入院や入所などの手続き支援
・日常生活に必要な支援
・死後の事務に関する支援

などが制度上位置づけられます。

厚生労働省の資料では、死後の事務として、

葬儀・納骨、家財処分に関する契約手続き、

行政への届出などが例として示されています。

これまで家族や親族が担うことが多かった仕事の一部を、

社会福祉の仕組みの中で支えていこうという考え方です。

 

「身元保証制度」ができるわけではない

ここは少し注意が必要です。

今回の改正を

「国が身元保証をしてくれるようになる」

と理解するのは正確ではありません。

入院・入所の手続きや緊急時の連絡、費用の支払いなど、

身寄りがないことで生じる具体的な生活上の課題について

支援する仕組みが整備されます。

また、亡くなった後についても、葬儀・納骨や家財処分、行政への届出などが

支援の対象として示されています。

「身元保証」という一つのサービスを新しく国が提供するというよりも、

これまで家族が担ってきたさまざまな役割を、

必要に応じて社会福祉の仕組みで支えていくと考えた方が分かりやすいでしょう。

 

新たな課題も

ただ、新たな課題も出てきます。

前回の記事で紹介した「待機者」の問題です。

国は、身寄りのない高齢者などへの支援を広げようとしています。

しかし現在の日常生活自立支援事業では、

すでに支援を担う人材が不足しています。

令和6年度の調査では、専門員について

「不十分」と回答した社会福祉協議会が37.3%、

生活支援員について「不十分」と回答した社会福祉協議会が49.4%ありました。

つまり、

支援を必要とする人が増える
↓
支援の対象を広げる
↓
では、実際に誰が支えるのか

という問題が残ります。

制度を作ることと、その制度を現場で運用できる体制を作ることは、

別の問題だからです。

 

福祉を支える人材についても見直し

今回の改正では、こうした福祉人材の確保や負担軽減についても

見直しが行われています。

例えば、介護支援専門員、いわゆるケアマネジャーについては、

これまで5年ごとに必要だった更新の仕組みを廃止します。

ただし、「研修がなくなる」という意味ではありません。

更新制を廃止したうえで、専門職として必要な知識や技能を

継続的に身につけるための研修のあり方を見直すことになっています。

また、介護福祉士養成施設の卒業者については、

一定の経過措置を見直し、令和13年度までの卒業者について、

卒業後5年間は介護福祉士の資格を有することができる仕組みが

示されています。

さらに、災害時に福祉的な支援を行う「災害派遣福祉チーム(DWAT)」

についても、人材登録の仕組みが整備されます。

今回の改正は、身寄りのない高齢者への支援だけではなく、

福祉サービスを支える人材や地域の体制そのものを見直す内容になっています。

 

制度はいつから変わる?

今回の改正は、すべてが2027年4月1日から始まるわけではありません。

法律の原則的な施行日は2027年4月1日ですが、

今回取り上げた「福祉サービス・保健医療サービス等利用援助事業」

などの一部については、公布の日から2年を超えない範囲内で、

政令で定める日とされています。

 

「家族が支える」を前提にしない社会へ

今回の改正を見ていると、日本の福祉を取り巻く環境が変わっていることが

分かります。

これまでは、

「困ったら家族に相談する」

ということが、多くの場面で自然な前提になっていました。

しかし、一人暮らしの高齢者が増え、家族が近くにいない人も増えています。

家族がいても、必ずしも支援できるとは限りません。

そうなると、

「自分が困ったとき、誰に何を頼めるのか」

を考えておくことが重要になります。

今回の法改正は、こうした社会の変化に対応して、家族だけに頼るのではなく、

地域や社会全体で支える仕組みを整えていく動きの一つといえます。

 

これからは「早めの準備」も大切に

制度が整備されることは大切です。

ただ、制度ができればすべての問題が解決するわけではありません。

入院したときには誰に連絡してもらうのか。

介護が必要になったら、どのようなサービスを利用するのか。

判断能力が低下した場合のお金の管理をどうするのか。

亡くなった後の葬儀や家財の整理をどうするのか。

こうしたことを、元気なうちから少しずつ考えておくことも大切です。

「まだ先のこと」と思っていても、家族構成や生活環境は変わります。

これからは、家族だけではなく、行政や福祉、医療、地域、

そして必要に応じて専門家など、

さまざまな支援先を組み合わせて生活を支える時代に

なっていくのかもしれません。

今回の制度改正は、高齢者だけの問題ではありません。

「自分に何かあったとき、誰が支えてくれるのか」

これは、誰にとっても少しずつ考えておきたいテーマに

なっているのではないでしょうか。

 

当事務所では

「何かあった時のための早めの準備」のお手伝いを

させていただいております。

お気軽にご相談ください。