
皆様こんにちは。
奈良市富雄の行政書士 松岡です。
奈良県南部・東部の「奥大和」で、移住の形が少しずつ変わっています。
これまで地方への移住というと、
「自然豊かな場所で暮らしたい」
「都会を離れてゆっくり暮らしたい」
「古民家で田舎暮らしをしてみたい」
といったイメージが強かったかもしれません。
ところが最近は、「子どもの教育環境」を理由に地域を選ぶ家族にも
注目が集まっています。
奥大和は奈良県南部・東部の19市町村からなる地域で、
県全体の約8割の面積を占めています。
山や川に囲まれた自然豊かな地域ですが、
一方で人口減少や少子化という課題も抱えています。
そこで自治体が力を入れているのが、
「移住してもらう」だけではなく、
「ここで子どもを育てたい」と思ってもらえる環境づくりです。
その代表例の一つが川上村です。
川上村では、義務教育学校「かわかみ源流学園」を設け、
地域の自然を生かした教育など、
村ならではの学びを進めています。
「子どもの数が少ない」という地方の弱点を、
逆に「一人ひとりに目が届きやすい教育環境」
という特徴に変えていく発想です。
また、上北山村でも「上北山やまゆり学園」
という義務教育学校が設けられています。
上北山村では、2014年度から施設一体型の小中一貫教育を始め、
2017年度には保育園も同じ施設に併設。
2020年度からは義務教育学校として、
保・小・中をつなぐ教育体制を整えています。
さらに、やまゆり保育園は定員19人という小規模な保育環境で、
少人数ならではのきめ細かな保育を特徴としています。
保育料と給食費も無料とされています。
都市部では「子どもの数が多いこと」が学校の活気につながります。
一方、山村では「少人数だからこそ、
一人ひとりを大切にできる」という別の価値を打ち出すことができます。
もう一つ興味深いのが、移住する前に地域を体験してもらう仕組みです。
奈良県は奥大和で「暮らす奥大和」という
ローカルステイ・プログラムを実施しています。
単に観光地を巡るのではありません。
地域の住民がホストとなり、
「どんな家があるのか」
「仕事はあるのか」
「学校はどうなっているのか」
「病院や買い物はどうするのか」
といった、実際に暮らすうえで気になることを現地で知ることができます。
つまり、
観光 → 移住
ではなく、
体験 → 地域を知る → 暮らしを考える → 移住
という段階をつくっているわけです。
2026年には、奥大和の複数地域を2泊3日で巡り、
実際に地域で暮らす人から話を聞く
「奥大和暮らし探索ツアー」も実施されています。
参加費・宿泊費は無料という仕組みでした。
もちろん、学校が魅力的だからといって、それだけで移住できるわけではありません。
親には仕事があります。
住む家も必要です。
病院や買い物の環境も気になります。
子どもが高校へ進学するときのことも考えなければなりません。
だからこそ、奥大和の取り組みで興味深いのは、
教育だけを売り込むのではなく、
暮らし全体を体験してもらおうとしていることです。
川上村の移住・定住サイトでも、教育だけでなく、
子育て支援、住まい、仕事、移住体験などをまとめて紹介しています。
地方への移住を考える人にとっては、
「自然が豊か」
だけでは足りません。
「そこで家族がどう暮らせるのか」
まで見えることが重要になってきます。
地方の人口減少対策というと、企業誘致や観光客の増加などが注目されがちです。
もちろん、それらも重要です。
しかし、子育て世帯が移住すれば、単純に住民が1人増えるだけではありません。
子どもが学校に通い、親が地域で働き、住宅を借りたり購入したりする。
さらに、地域の店を利用し、地域活動に参加する。
家族単位で地域との関係が生まれていきます。
だからこそ、「どんな人に住んでもらいたいのか」を考えた地域づくり
が重要になっているのかもしれません。
奥大和の取り組みを見ていると、
その一つの答えとして
「子どもを育てたい家族」というターゲットが見えてきます。
人口減少が続く地域でも、
「人が減っているから、何とか増やそう」
だけではなく、
「この地域だからこそ選びたいと思ってもらえる理由をつくる」
という発想が、これからますます重要になってくるのではないでしょうか。
奈良の山村で進んでいる「教育移住」の動きは、
地方の人口減少対策を考えるうえでも、興味深い事例になっています。